CREST

[Society 5.0基盤ソフト]

安全性と有用性の保証ある

ヘルスケア匿名コホート基盤

−公開ワークショップ−

PETsが実現するヘルスケアデータの安心安全な二次利用

日時 :
2026年9月14日(月) 午後
場所 :
明治大学中野キャンパス  ホール(低層棟5F)
参加費 :
無料

主催

科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST)
研究領域: [S5基盤ソフト] 「基礎理論とシステム基盤技術の融合による Society 5.0 のための基盤ソフトウェアの創出」岡部 寿男 研究総括
研究課題: 安全性と有用性の保証のあるヘルスケア匿名コホート基盤 
研究代表者: 菊池浩明(明治大学)
主たる共同研究者: 金森 祥子(情報通信研究機構),荒井ひろみ(理化学研究所), 森 由希子(京都大学医学部附属病院),野島 良(立命館大学)
研究期間: 2021年10月~2027年3月の5.5年間

開催趣旨

CREST匿名コホート基盤(AHC)は,再識別の脅威に対して理論的な安全性があり、加工で生じる誤差に対して統計的な評価が与えられる次世代の匿名加工データを確立することを目的とするプロジェクトです。 2027年3月に終了となるプロジェクトの成果を発表するためのワークショップを開始致します。 本ワークショップでは,プロジェクト研究者によるこれまでの取組の総括に加えて、改正を重ねる個人情報保護法制度とヘルスケアデータ利活用に社会課題,認定匿名加工医療情報の現場の課題そして、理論的な保証の基盤となる最新の差分プライバシー技術に関する研究者による基調講演を行います。

プログラム

  • 01

  • 開会挨拶
    13:00

  • 荒川 薫 明治大学 総合数理学部長
  • 02

  • 基調講演1 13:50

    若江 雅子氏
    若江 雅子氏
    朝日新聞
    編集委員
    個人情報保護法2026改正で見えた課題と期待

    略歴
    1988年、読売新聞入社。社会部記者、編集委員などを経て2025年から朝日新聞編集委員。主著に「膨張GAFAとの闘い デジタル敗戦 霞が関は何をしたのか」(中公新書ラクレ、2021年)。担当執筆「利用者情報に関するルール形成プロセスの課題」山本龍彦ほか編「個人データ保護のグローバル・マップー憲法と立法過程・深層からみるプライバシーのゆくえ」(弘文堂、2024年)など。

    講演概要

    「無風」のイメージが強かったこれまでとは打って変わって、大きな盛り上がりをみせた個情法の2026年改正。国会では野党から厳しい質問が浴びせられ、Xでは「個人情報保護法改正に反対します」「個人情報保護法改悪に反対」のハッシュタグがトレンド入りした。大きな批判を呼んだのは「統計作成等の例外」(AIモデル開発や統計情報作成を目的とする場合には個人データの第三者提供などの際の本人同意の取得を不要とする特例)である。どこに問題があったのか、そして背景にはなにがあったのか。個人の権利利益を保護しながらAIとビッグデータ利活用を進めていくためには何が必要なのかを考える。

  • 03

  • 基調講演2 13:50

    山本 隆一氏
    山本 隆一氏
    匿名加工医療情報
    公正利用促進機構
    医療情報二次利用の最前線の課題

    略歴
    医学博士・医師
    一般財団法人医療情報システム開発センター 理事長
    一般財団法人匿名加工医療情報公正利用促進機構 理事長
    自治医科大学客員教授
    1952年 大阪市生まれ。大阪医科大学を卒業後内科研修等を経て、大阪医科大学病院医療情報部助教授。 2003年3月より東京大学大学院情報学環准教授 2016年4月より一般財団法人医療情報システム開発センター理事長および自治医科大学客員教授兼務 2018年6月より一般財団法人匿名加工医療情報公正利用促進機構理事長兼務。 著書(分担執筆)には「医療の個人情報保護とセキュリティ(有斐閣)」、 「医療情報の利活用と個人情報保護(EDITEX)」、「医療健康データの取扱説明書(オーム社)」など。 医療情報学会学会長の他、多数の医療情報系の政府会議で座長や委員を務める。

    講演概要

    我が国の医療情報のデジタル化は世界的に見れば比較的速く進行し、速く進んだために、医療情報の多目的での利用が遅れたとも言える。実際、本格的な国家レベルの分析を含む利活用は2010年ごろに始まった診療報酬明細と特定健診情報を網羅的に集積したNDBの運用まで待たなければならなかった。その後の個人情報保護法制の数次の改正や次世代医療基盤法の整備等で、制度的手当はされてはいるものの、まだ十分に活用できているとは言い難い状況である。演者はNDB等の公的DBの利活用制度に広範に関与してきて、また次世代医療基盤法の制定や制度に基づく認定作成事業者の運用に関わってきたので、そのような経験を踏まえ、我が国の医療情報の二次利用の最新の状況を紹介するとともに、課題と解決の方向性を論じたい。

  • 04

  • 基調講演3
    14:30

    村上 隆夫氏
    村上 隆夫氏
    統計数理研究所
    准教授
    差分プライバシーにおけるモデルの整理と拡張型シャッフルモデルの紹介

    略歴
    東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。
    日立製作所 研究員、産業技術総合研究所 研究員、同研究所主任研究員を経て、
    2023年より統計数理研究所准教授。
    2020年カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員。
    2020年船井学術賞受賞。専門は差分プライバシー、データ匿名化、プライバシー保護データ解析。

    講演概要

    差分プライバシーはデータ解析や機械学習におけるプライバシー保護のデファクト標準として知られ、企業や米国国勢調査などで導入されている。本講演では、まず差分プライバシーの4つのモデル(central, local, shuffle, MPC-DP models)の長所・短所を簡単に説明する。その後、ユーザとdata collectorとの間の結託攻撃や、ポイズニング攻撃に対する耐性を持つようにshuffle modelを拡張した拡張型シャッフルモデル(augmented shuffle model)を紹介し、TEEを用いてshufflerを実装する際にメモリアクセスパターンや制御フローに基づくサイドチャネル攻撃に対して安全にするための方法論も紹介する。

−15:10  休憩−

プロジェクト報告

  • 金森 祥子
    司会:金森 祥子
    国立研究開発法人情報通信研究機構
  • 略歴
    青山学院大学文学部英米文学科卒業。 1999年より情報通信研究機構(NICT)に入所、現在はサイバーセキュリティ研究所 セキュリティ基盤研究室の主任研究技術員。 ユーザのプライバシーポリシーの理解度、同意取得における課題等、ユーザブルセ キュリティ・プライバシ分野の研究開発に従事。2024年度山下記念研究賞。 プライバシー保護連合学習技術『DeepProtect』の開発チームの一員として、公益 財団法人通信文化協会の第 71 回前島密賞(団体賞)を受賞した。 情報処理学会フェロー。

  • 05

  • CRESTプロジェクト概要と差分プライベート匿名加工技術

    15:30

    菊池 浩明氏
    菊池 浩明氏
    明治大学

    略歴
    明治大学大学院修了.博士(工学)。(株)富士通研究所,東海大学を経て、
    2013年より明治大学総合数理学部専任教授。
    一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)代表理事
    情報ネットワーク法学会理事長
    2010年度・2017年度情報処理学会JIP Outstanding Paper Award.2013年 IEEE AINA Best Paper Award.
    電子情報通信学会、日本知能情報ファジィ学会、IEEE, ACM各会員、情報処理学会フェロー。

  • 06

  • CREST 差分プライバシーを備えたExtreme Learning Machineの展開

    15:50

    レ チュウ フォン氏
    レ チュウ フォン氏
    統国立研究開発法人
    情報通信研究機構

    略歴
    2009年に東京工業大学大学院理工学研究科で博士号を取得。同年、情報通信研究機構(NICT)に入構し、現在はサイバーセキュリティ研究所の主任研究員を務める。暗号技術およびプライバシー保護機械学習を専門とし、準同型暗号を用いた安全な深層学習や、通信効率に優れた分散学習技術の研究に取り組む。2018年国際標準開発賞、2023年IEEE信号処理学会論文賞を受賞。さらに、プライバシー保護連合学習技術『DeepProtect』の開発チームの一員として、公益財団法人通信文化協会の第71回前島密賞(団体賞)を受賞した。

    講演概要

    本講演では、高速かつ軽量なExtreme Learning Machine(ELM)に差分プライバシーを導入した一連の研究を紹介する。まず、ELMの学習で用いる十分統計量にラプラスノイズを加え、純粋な差分プライバシーを保証するDPELMの仕組みを説明する。次に、正則化パラメータを導入し、同一のプライバシー保証の下で複数の私的分類器を選択可能にするDPELRを示す。さらに、生データを共有せず、各拠点で保護された統計量のみを集約するDP-FedELMへの拡張を紹介する。公開データセットを用いた評価を通じて、プライバシー予算、隠れノード数、予測精度の関係を検証するとともに、非IID・不均衡データに対する連合学習の効果を示す。最後に、ノイズ量が入力次元に依存しないという利点と、隠れノード数に対して二次的に増加するという課題を議論する。

  • 07

  • CREST 健全な同意に向けたインターフェイス研究

    16:10

    荒井 ひろみ氏
    荒井 ひろみ氏
    理化学研究所

    略歴
    東京工業大学大学院総合理工学研究科で博士号を取得後、理化学研究所基礎科学特別研究員、東京大学情報基盤センター助教、NICT主任研究員などを経て、現在は理化学研究所革新知能統合研究センター人工知能安全性・信頼性ユニットユニットリーダー。プライバシー保護技術やAIの公平性、AIの倫理、ヒューマンコンピュータインタラクションなどに関わる研究に取り組む。

    講演概要

    本講演では、プライバシーポリシーにおける同意がユーザーの理解と自律的な意思決定に支えられるべきものだという観点から二つの研究を紹介する。まず、ダークパターンが存在する意思決定において、ダークパターンを回避できたユーザーであっても、余計な時間や労力を負い、ユーザビリティやサービスへの信頼が低下し得ることを示す。また、法律用語の解説を提示することで、プライバシーポリシーに記載されたデータ取扱いへの理解が向上する一方、支援があっても利用されない場合があることを示す。これらを通じてユーザーが内容を理解し、過度な負担や誘導なく納得して選べるインタフェース設計の重要性を議論する。

  • 08

  • CREST 匿名加工が医学研究に与える影響を考える

    16:30

    森 由希子氏
    森 由希子氏
    京都大学

    略歴
    1998年滋賀医科大学医学部卒業後2007年京都大学大学院医学研究科にて博士(医学)を取得。京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 准教授などを経て、2026年5月より京都大学大学院医学研究科附属 医療DX教育研究センター(医療データ管理支援部門)教授。2016年から2018年にかけては、人事交流により厚生労働省保険局医療介護連携政策課保険データ企画室に医系技官として出向。NDB匿名医療保険等関連情報データベース)の管理・運用業務に従事した。

    講演概要

    医療情報は病歴や遺伝情報などの機微情報を多く含む要配慮個人情報であり、慎重な取扱いが求められる。個人情報保護の対策としてデータの匿名加工が導入されている一方で、医学研究の現場では年齢や性別をはじめ、診断日、治療日、詳細な治療内容といった精緻な情報が不可欠となる場合が多い。そのため、個人情報保護を目的とした匿名加工が、研究データの精度や有用性に与える影響が議論されている。本講演では、匿名加工が医学研究に及ぼす影響について、実際の匿名加工医療情報を用いて実施した研究成果をもとに報告する。さらに、適切な個人情報保護と医学研究における実効的なデータ利活用を両立させるための課題と展望について考察する。

  • 09

  • CREST プライバシーが保護されたデータの解析手法

    16:50

    野島 良氏
    野島 良氏
    立命館大
    情報学部

    略歴
    2005年、東京大学生産技術研究所に勤務。2006年より情報通信研究機構(NICT)に勤務し、情報セキュリティおよび暗号・プライバシー保護技術に関する研究開発に従事。NICTでは研究活動に加え、研究プロジェクトや組織の運営にも携わり、室長などを歴任。2023年より立命館大学情報理工学部教授。現在は、暗号技術、差分プライバシー、プライバシー保護技術などを中心に、情報セキュリティ分野の研究・教育に取り組んでいる。

    講演概要

    本講演では、データを活用しながら、いかにプライバシーを保護し、データの真正性を確保するかという観点から、近年取り組んでいる研究を紹介する。まず、複数の組織が互いのデータを直接開示することなく、集合の類似度や共通要素数を計算するプライバシー保護集合演算について紹介する。MinHash、加法準同型暗号、差分プライバシーを組み合わせることで、大規模データに対して集合類似度や共通要素数を効率的に近似する方式を示し、さらに垂直連合学習への応用について述べる。次に、デジタル署名されたデータを、その真正性を維持したまま匿名化するための編集可能署名について紹介する。従来の単純な削除やマスキングにとどまらず、あらかじめ定めた匿名化ルールに従ってセル単位でデータを変換し、その変更が正当なものであることを検証可能とする方式、および匿名化を行える主体を限定する方式について説明する。

  • 10

  • 閉会挨拶
    17:10

  • 菊池 浩明 明治大学